結論から言うと、墓じまいの費用を「相場はいくら」と1つの数字で示すことはできません。編集部が20社の公式サイトを調べたところ、価格を公開していたのは14社ありましたが、その単位が「1㎡あたりの単価」「面積帯ごとの一式料金」「プラン一式」「運搬車両のサイズ別」に割れており、同じ基準で平均を取れないためです。以下では、実際に公開されている価格を単位ごとに分けて並べます。
この記事の調査範囲:2026年8月時点で当サイトが掲載していた20社の公式サイトを対象とした調査ラウンドの数字です。引用の安定のため、掲載事業者が増えてもこの記事の数字は書き換えません。最新の掲載社数は事業者一覧をご覧ください。
墓じまいの費用を調べると「総額35万〜150万円」といった相場が出てきます。ただ、いざ見積を取ると相場と合わないことがあります。この記事は、編集部が墓じまい代行事業者20社の公式サイトを1件ずつ開いて、実際に公開されている価格を集めた結果をもとにしています。相場を言い当てるためではなく、見積書を読めるようになるための記事です。
先に結論を3つ書きます。
- 公開価格は「単位」がバラバラなので、単純に平均しても意味がありません。面積単価・一式プラン・運搬車両のサイズ別・行政手続きの報酬だけ、と数え方そのものが違います
- 1㎡あたりの単価を明示している事業者は、40,000円〜と88,000円〜を公開していました。よく引用される「1㎡あたり10〜15万円」より低い水準を公開している事業者が実在します
- 同じ事業者のサイト内で、「相場」として示す金額と、自社の価格表の金額が大きく違うことがあります。相場の記述は自社の見積額ではありません
墓じまいの費用は4つに分かれる
総額が動く理由は、性質の違う費用が合算されているからです。まずここを分けて考えると、見積書のどこを比べればいいかが決まります。
- 墓石の解体・撤去工事 — 面積と現場の条件で決まる。事業者が価格を出しているのは主にここ
- 行政手続き(改葬許可申請) — 市区町村への申請。事業者の報酬と、自治体の手数料は別物
- 閉眼供養(魂抜き)と墓地管理者への支払い — お布施、寺院墓地の場合は離檀に伴う支払いの話も出てくる
- 新しい納骨先 — 永代供養墓・樹木葬・納骨堂・散骨。ここが総額の振れ幅として一番大きい
相場記事の「35万〜150万円」といった幅の大部分は、4番の選択で生まれます。だから「墓じまいはいくら」ではなく「撤去はいくら、手続きはいくら、納骨先はいくら」で聞くのが正確です。
1. 撤去工事の価格は「何単位で書いてあるか」を見る
調査した20社が公開している撤去工事の価格は、書き方が3種類に分かれていました。
面積単価で書く
「1㎡あたり」という単価をはっきり示していたのは2社で、40,000円〜と88,000円(税込)〜でした(いずれも「〜」付きの下限表示)。区画が広ければ比例して上がります。
面積で書く事業者は、区画の広さが分かれば概算を自分で計算できるので、比較には向いています。一方で下限表示なので、実際の見積が下限になるとは限りません。後者の事業者は「2.0㎡で約180,000円、3.3㎡で約290,000円」という換算例も併記していました。
なお「1㎡以下 98,000円〜」という書き方は面積単価ではなく、次のサイズ帯表示です。単価と混ぜて比べないよう気をつけてください。
区画のサイズ帯ごとの一式で書く
「1㎡以下 98,000円〜/2〜3㎡未満 165,000円〜/3〜4㎡未満 216,000円〜/4〜5㎡未満 275,000円〜」のように、サイズ帯で段階的に示す形です。自分の区画がどの帯かが分かれば読みやすい書き方です。
プラン一式で書く
「基本料金 198,000円/ベーシックプラン 298,000円」のように、面積を出さずプラン名で示す形です。何が含まれて何が別料金なのかを確認する必要があります。
なお1社は運搬車両のサイズ別(2t車 60,000円/3t車 75,000円/4t車 85,000円)と、25kmごとの交通費という書き方をしていました。撤去した墓石の運搬を実費構造で示す形です。単位が違うので他社と直接は比べられません。
2. 「相場」の記述と、その事業者の価格表は別物です
これは調査で最も驚いた点です。自社サイトに「墓じまいの相場は総額100万〜350万円」と書きながら、自社の施工価格は数十万円台で提示しているケースがありました。別の事業者も「総合相場35万〜240万円」と書いています。
相場の記述は、その事業者の見積額ではありません。全国の高額なケースを含めた幅として書かれているものです。読むときは「相場」の段落と「料金表」の段落を分けて読む必要があります。
実際に総額の内訳例まで公開している事業者もありました。ある事業者は3つのケースを載せています。
- 村墓地の例: 合計276,000円(撤去120,000円+遺骨取出20,000円+合祀納骨100,000円+竿石供養20,000円+税16,000円)
- 寺院墓地の例: 合計453,100円
- 公営墓地の例: 合計442,000円
別の事業者は「墓地2㎡・遺骨1柱で合計316,000円」、また別の事業者は「2.0㎡で約180,000円、3.3㎡で約290,000円」という例を出しています。内訳付きの実例を公開している事業者は、見積を読み合わせるときに話が早いという実利があります。
3. 行政手続きの費用は、報酬と手数料を分けて考える
改葬許可申請の代理・代行は行政書士の独占業務です(行政書士法1条の2、19条1項)。この部分の報酬を単独で公開している事業者があり、確認できた範囲では30,000円から180,000円でした。プラン制で30,000円/55,000円/120,000円と段階を分けている事務所、「行政書士報酬120,000円〜180,000円前後」と幅で示す法人、「改葬手続き代行38,500円」「行政手続きサポート33,000円」と単品で出している事業者があります。
ここで混同しやすいのが自治体に払う手数料です。これは事業者の報酬とは別で、金額も自治体ごとに違います。編集部が12自治体を調べたところ、手数料を「無料」と明記していたのは2自治体、「1件300円」と明記していたのは1自治体で、残る9自治体は手数料をページに書いていませんでした。書いていないことは無料を意味しないので、窓口での確認が必要です。
詳細は改葬許可申請の自治体別データにまとめています。必要書類の呼び名(「埋蔵証明書」「納骨証明書」など)も自治体ごとに違います。
1社は「行政手続き 数千円〜2万円」と書いていましたが、この水準は事業者の報酬ではなく自治体の手数料や書類の取得費を指していると読むのが自然です。見積書の「行政手続き費用」が報酬なのか実費なのかは、必ず確認してください。
4. 閉眼供養と、寺院墓地の場合の支払い
閉眼供養(魂抜き)のお布施は、公開している事業者では33,000円〜という水準や「3万〜5万円」という記述が見られました。現地手配を代行する事業者もあります。
寺院の墓地の場合、離檀に伴う支払いの話が出ることがあります。ある事業者は「離檀料の相場は30,000円〜200,000円程度」と参考情報として書いていました。ただしこれに法的な支払い義務があるかどうかについて、当サイトは断定しません。公開情報から確認できる範囲を超えるためです。金額の妥当性や交渉が必要な状況であれば、事業者ではなく弁護士など適切な専門家にご相談ください。
なお、20社のうち1社が「離檀交渉の代行」を明記していました。交渉の代行には弁護士法の論点があるため、当サイトは記載の有無を事実として記録するにとどめ、適法性の判定はしていません。
5. 新しい納骨先の費用が総額を最も動かす
公開されていた納骨先の価格をそのまま並べます(いずれも下限表示または単価)。
- 合祀・合葬: 50,000円 / 55,000円〜 / 33,000円〜
- 送骨: 3,000円〜
- 樹木葬: 80,000円〜 / 375,000円
- 納骨堂: 100,000円〜
- 霊園への納骨: 100,000円〜
- 寺院への納骨: 30,000円〜
- 永代個人墓: 120,000円 / 永代夫婦墓: 170,000円 / 永代供養墓: 900,000円
- 散骨: 30,000円〜 / 35,000円〜(海洋散骨の代理は27,500円〜)
- 粉骨: 14,300円〜
合祀と個別の永代供養墓では金額が一桁違います。総額を抑えたい場合、撤去工事の値引き交渉より、納骨先の形を決め直すほうが影響が大きいことになります。ただし合祀は原則として後から遺骨を取り出せません。金額だけで選ばないでください。
6. 自治体の助成は「あれば使える」程度に考える
墓じまいに使える補助金があると紹介されることがありますが、編集部が12自治体を一次確認した結果として、次の3点を先にお伝えします。
- 対象はほぼ市営霊園の返還に限られます。寺院の境内墓地や民営霊園は対象外です
- 「補助金」ではない制度があります。公式表記が「返還金」「還付金」で、すでに納めた永代使用料の一部を返す性質のものです。撤去費用をもらえる制度とは中身が違います
- 予算枠制で、年度内に受付が終わることがあります。ある市は原状回復費の助成を最大440,000円まで用意していますが、令和8年度は「予算額に達したため受付を終了しました」と公表されています(2026年5月22日現在)
制度が確認できた自治体と金額は改葬許可申請の自治体別データに一覧で載せています。ある市は公式ページに「墓じまいに関する補助金制度はありません」と明記していました。問い合わせる手間が省けるので、これも役に立つ事実として掲載しています。
見積を取るときに聞くとよい5つのこと
ここまでの内容を、実際の行動に落とします。
- 「この金額は何単位ですか」 — 面積単価か、区画サイズ帯の一式か、プラン一式か。単位が違う見積は並べても比べられません
- 「追加費用が出る条件を教えてください」 — 重機が入らない、傾斜地、区画が広い、といった条件で変動します。この条件を先に公開している事業者もあります
- 「改葬許可申請書の作成は誰が行いますか」 — 行政書士の独占業務なので、自社の行政書士か、提携先か、あるいは書類の書き方を案内するだけなのかがはっきりします
- 「行政手続きの費用は報酬ですか、実費ですか」 — 自治体の手数料と事業者の報酬は別物です
- 「納骨先はいくらのプランで見積もっていますか」 — 総額の差はほとんどここで生まれます。合祀か個別かで一桁変わります
3番については、掲載している事業者ごとに公式サイトでの記載状況を調べてあります。墓じまい業者の選び方と掲載事業者の一覧もあわせてご覧ください。
この記事の情報について
金額はすべて、2026年8月10日時点で各事業者・各自治体の公式サイトに公開されていた内容です。当サイトは相場を独自に算出していません。公開価格の単位が事業者ごとに異なるため、平均値を出すと実態を誤って伝えることになると判断したためです。
価格は変わります。また同じ事業者でも現場の条件で見積は変動します。最終的な金額は必ず事業者に直接ご確認ください。